2020年4月29日: 5月6日夜に放映予定のNHK総合TVの「潜れ!さかなクンー海の世界へレッツギョ―!!」にゲスト解説者として出演

大型連休最終日の5月6日(水)夜に,NHK総合テレビの特別番組 「潜れ!さかなクンー海の世界へレッツギョ―!!」の第5回目である,潜れ!さかなクン「熊本・八代海~知られざる神秘の海へ~」に,安藤寿男教授がゲスト解説者として出演します!

本学のFacebookでも紹介されています.

https://www.facebook.com/ibadai.mito

 

八代海海底のカキツバタガキ礁の共同調査

九州南西部の熊本県から鹿児島県にかけては八代海(不知火海)と呼ばれる大きな内湾があります.この八代海の南部,鹿児島県出水市米ノ津港から北西約10 kmの海底には,マウンド(半球)状の海丘地形が90個近く存在することが,海上保安庁の調査などで明らかになっていました(伊藤ほか,2010など).この海丘地形の内部構造や形成過程などの実態を明らかにするために,2012年に安藤教授と熊本大学の秋元和實を中心とする共同調査チームは,海底地形図作成(インターフェロメトリ音響測深機),海底浅層地質構造探査(パラメトリック地層探査機)に加えて,ダイバーによる潜水調査を行いました.それにより,これらの海丘群が,カキツバタガキと呼ばれる潮下帯(水深10-50 m)に生息するカキ類の仲間(マガキより原始的な種類)が長い年月で作り上げたカキ礁であることが明らかになりました(安藤ほか,2013).

今回の番組は,この海丘にさかなクンが潜水調査をすることにより,カキツバタカキ礁の形成の謎に迫るという,設定のもとに作成されました.茨城大学・熊本大学の共同調査にさかなクンや,NHK専属のダイバーチームや現地のプロダイバーチームが加わって,現地ロケを行いました.

今回の調査では,地質構造探査によって前回の調査よりも精密な海丘の表面および内部構造が明らかとなり,海丘の形成過程解明につながる重要な成果が得られました.また,エアドリルによる海底コア掘削から得られたカキツバタカキ殻片試料の炭素14年代測定(業者依頼)を行い,カキ礁形成に関する年代データが得られました.

これらを要約すると,次のような重要な成果や予察的な考察が得られました.
1) 海丘(平均サイズは直径50 m,高さ5 m)の海底下には,海丘を構成するマウンド地形が海底下5〜8 mまで連続し,全体の高さは10 mを越える.
2) 海底下5〜8 mの下底に音波の不連続面があって,最終氷期の浸食面(八代海が陸だった時の地面=不整合面)と解釈される.
3) 海丘は海底下に大きく広がり,その幅は数100 mに達している.
4) 海丘頂上および海丘底部から1 m海底下にあるカキツバタの貝殻試料より数100年前の年代が得られたことから,カキ礁は少なくとも数1000年以上の前には形成が始まっていたと推定される.
5) 海丘間平底下20 cmから得られた,保存の悪いカキ殻片から約10,000万年前という値が得られたことから,おそらく最終氷期以降の海水準上昇(縄文海進)の初期にはカキ礁の形成が始まっていたと予測される.
6) 海底面上にある海丘地形と海底下の構造を含めると,すべてではないにしても,カキツバタカキ礁は海丘群全体に広がっているように見える.
7) 巨大カキ礁は縄文海進の初期には平坦な礁として形成がはじまり,数1000年〜1万年の長期間にわたって巨大カキ礁が存在していたと予測される.
8) 海底面上のマウンド状の海丘地形と,海底下の平板状の構造の違いは,数千年前にカキ礁の成長様式が変化した可能性がある.

 

現地ロケ

1月下旬〜2月上旬に行われた現地ロケの詳細は,熊本大学のWebsite(下記URL)に,安藤教授の共同研究者であり,今回の現地ロケで大学の調査船の運用に尽力された,熊本大学くまもと水循環・減災研究教育センターの秋元和實准教授の研究を紹介するページとして掲載されています.
安藤教授と秋元准教授の2人が案内役として,さかなクンと一緒に八代海南部の海底にある大規模なカキツバタカキ礁の謎にせまるべく調査に出かけています.熊本大学の調査船,ドルフィンスーパーチャレンジャー号で出かける3人の勇姿が番組で紹介されます.

http://paleogeo-ando.sci.ibaraki.ac.jp/index.php?id=314

https://www.kumamoto-u.ac.jp/whatsnew/koho/2020/20200406

https://www.kumamoto-u.ac.jp/daigakujouhou/kouhou/kouhoushi/kumadainow/labo/2020/20200406

 

遠隔ロケ(リモートロケ)

コロナウィルス対策による緊急事態宣言初日に予定されていたスタジオロケ(NHK渋谷放送センター)は急遽中止となり,豪華ゲスト3名に混じっての出演はなくなってしまいました.その代替策として,遠隔収録が行われ,さかなクン(事務所),初回からのアナウンサーの首藤奈知子アナ(松山放送局),茨城大学(安藤),いつもここから(事務所)の4箇所と,番組ディレクターほかをOnlineで繫いで行われました.茨城大学では,理学部G棟1Fの地球環境資料展示室にパソコンとTVカメラを設置して,パソコン上での映像・音声・台本ファイルを見聞きしながらの収録となりました.


リモートロケの様子

さかなクンの人を引きつける熱演,首藤アナウンサーとの絶妙な掛け合い,NHK専属ダイバーチームによる珍しい美麗な映像,さかなクンの蘊蓄(うんちく)溢れる解説に圧倒されるようなロケとなりました.
番組の前半では,水俣市の海岸にあるタツノオトシゴの楽園が紹介され,不思議は光景が連続します.後半はカキツバタカキ礁の調査編となり,現地ロケ様子も含め,さかなクンと首藤アナとの掛け合いに,安藤教授の解説が加わります.

さかなクンの独特の情熱的なキャラもありますが,特に3月からの厳しい情勢で,明るい話題・番組になるようにとの制作チームの意図もあって,これまでの番組とはひと味違ったアレンジがなされているようです.
現地ロケ,内容のアドバイス,台本の校正等に全面的に協力した成果がどのように反映されているのか,放映が楽しみです.

 

放送予定

第5回「潜れ!さかなクンー海の世界へレッツギョ―!!」

潜れ!さかなクン「熊本・八代海~知られざる神秘の海へ~」 NHK総合 5月6日(水)19時30分〜20時43分(73分)

番組サイト

https://www.nhk.jp/p/ts/LPLV6578XX/

https://www.nhk.jp/p/ts/LPLV6578XX/schedule/

予告動画サイト

https://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/trailer.html?i=23274


文献

伊藤弘志・和志武尚弥・那須義訓, 2010, 八代海南部の海底で発見された海丘群の潜水調査報告.海上保安庁 海洋情報部研究報告,(46), 96-102.

安藤寿男・大越健嗣・秋元和實・七山 太・坂本 泉・滝野義幸・根本安加里,2013,八代海南部の海底水深30mのマウンド群に発達するカキツバタ(二枚貝)礁.日本古生物学会第162回例会(横浜)講演要旨,B19.

安藤寿男・大越健嗣・秋元和實・七山 太・坂本 泉・滝野義幸・根本安加里,2013,八代海南部出水西北西沖水深30m の海底マウンド群に発達するカキツバタ(Hyotissa imbricata)礁.日本貝類学会平成25年度大会(豊橋)講演要旨.

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