2020年8月5日:茨城県北茨城・高萩地域の新第三系多賀層群と日立層群の層序に関する論文が出版されました

この度,産業技術総合研究所 地質調査総合センター発行の学術雑誌「地質調査研究報告」に投稿中の共著論文がようやく出版されました.この論文は,常磐地域南部に位置する,北茨城市・高萩市から日立市北部にかけての丘陵-海岸地帯の多賀層群と日立層群についての地質や層序を詳細に記載したものです.柳沢幸夫氏(産総研 地質調査総合センター 地質情報研究部門)の長年にわたる当地域の研究成果を総括的にまとめたもので,10年ほど前から共同研究を進めている安藤教授との成果も含まれています.
本文中での図の総数が53枚,表が4枚,付図が11枚,付表が20枚,図版が4枚,総ページが115ページにおよぶ大著になっています.珪藻化石層序の分析データ(珪藻化石帯,産出地点,産出層準など)が地質図,地質ルートマップ,地質柱状図に詳細に記され,さらに別途,試料採集場所が記されたルートマップ(付図)や産出種リストと頻度(付表)まで付されています.日本の地域地質の論文で,これだけ多くの生データが添付された,これだけ精確な記載論文はなかったとも思われます. これまでよく理解されていなかった多賀層群や日立層群の層序,分布,時代が詳しく解明され,それぞれ14(1670~750万年前),11(680~270万年前)の異なる時代(珪藻化石層序による)の海底チャネルユニットからなることを,53にもおよぶ図で詳述しています.
いずれにしてもこれまで類例をみない大作として,常磐地域南部の基本的研究文献となることは間違いありません.

なお,本論文には茨城県北茨城市五浦海岸周辺の最新の地質図,層序区分,地質構造に加えて,小五浦(六角堂の南の入り江)のルートマップや露頭写真,長浜―九ノ崎海岸のルートマップなど最新地質情報が満載です.

 

発表論文
柳沢幸夫・安藤寿男,2020,茨城県北茨城・高萩地域の新第三系多賀層群と日立層群:岩相層序と珪藻化石層序から復元した陸棚―陸棚斜面堆積物・海底谷埋積物・海底地すべり痕埋積物の複合体.地質調査研究報告,71(3), 85-199.
https://www.gsj.jp/publications/bulletin/bull2020/bull71-03.html
https://www.gsj.jp/data/bulletin/71_03_01.pdf

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