2020年11月6日:北茨城市五浦海岸で茨城県の高等学校理科教員の研修会で今夏全国的に話題となった炭酸塩コンクリーションを案内しました

茨城県内の高校理科(地学)教員の集まりである,茨城県高等学校教育研究会地学部の2020年度地区合同研修会で,安藤教授が巡検案内役を務めました.
この巡検では,北茨城市五浦海岸〜長浜海岸に岩礁として露出する新第三紀中新世(1800-1000万年前)の地層である多賀層群の要所を見学しました.出版になったばかりのMaeyama et al. (2020) や柳沢・安藤(2020)に掲載された地質図やルートマップなどの最新の研究成果を使って,最近話題となっている炭酸塩コンクリーションや,海底谷埋積物の複雑な堆積過程を解説しました.
最初に茨城大学五浦美術文化研究所では,天心記念館に展示された炭酸塩コンクリーションの岩石ブロックや解説パネルを見学しました.その後,海岸沿いの六角堂で,岩礁として広がる炭酸コンクリーションを目の前にしながら,奇岩風景の成因が,地質時代の昔(1650万年前)に地下深くにあった地層から漏れ出して海底近くまで湧出してきたメタンガスが,海底下で海水と化学変化して岩石となり,現在の波浪浸食で洗われたものであることを紹介しました.その後は,六角堂の南側の小五浦の入り江の浜で炭酸塩コンクリーションを含む多賀層群高久層の露頭,その上の庭園で,化学合成二枚貝群集化石を含む炭酸塩コンクリーションのブロックを見学しました.
午後は長浜海岸と九ノ崎で,柳沢・安藤(2020)で詳細に記載した多賀層群の海底谷内を充填する地層や海底谷の側壁の浸食面などを見学しました.平潟海底谷は,北茨城−高萩地域に数多く識別された海底谷の中で,海底谷の北側と南側の両方の壁を直接露頭で見ることができ,そして,海底谷の全体像が把握できる唯一の場所が長浜海岸であることを紹介しました,


写真:右端の岬が九ノ崎で,平潟海底谷の北壁が見られる.九ノ崎から写真中央部に向かって地層が手前側に緩く傾いている.左側の露頭では写真中央(向こう側)に向かって緩く傾斜している.そのため写真中央部に,海岸−陸方向(東西性)の軸をもった緩やかな向斜状構造をなしている.

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