2021年4月8日:岩手県の久慈層群産の植物化石に関する論文が出版されました

この度,日本古生物学会の国際英文雑誌 Paleontological Researchに岩手県の太平洋岸域に分布する白亜紀後期の久慈層群産の植物化石に関する論文が出版されました. この論文は,25年来の共同研究者である新潟大学理学部の高橋正道名誉教授によるもので,久慈層群玉川層(9000-8500万年前)の河川氾濫原成の黒色砂質泥岩から,主に水洗処理で抽出された保存の良い小型化石(Mesofossils)を記載したもので,シダ類の葉,針葉樹の葉芽や球果,被子植物(ミズキ目やスイレン目)の花や果実,種のリアルな写真が示されています.また,久慈層群の植物化石の組成(シダ類,針葉樹類,被子植物)の総括や久慈層群と双葉層群との植物相の類似性や年代論なども考察されています.

高橋先生は,長年にわたって白亜紀の被子植物の初期進化を研究され,多くの著作や論文を公表されています.安藤教授は1996年以降数年にわたって,被子植物の植物化石を多量に含む日本の白亜紀層について,双葉層群(福島県いわき市〜広野町)や久慈層群などを共同調査し,高橋先生が次々と保存のよい小型化石(花,果実,種子など)を見つけ出し,多くの研究成果が生まれました.特に双葉層群では,日本最古で初の被子植物炭化化石の発見(学術誌論文:A12,13)に端を発して,多くの被子植物の新種が記載されました.また,高橋先生は,本論文の外国人共著者との国際共同研究を進め,東アジアの白亜紀層を素材にした被子植物初期進化解明に大きな貢献をされました.そうした,共同研究の潮流の中で,本論文の最終著者であるPeter R. Crane(ピーター・クレイン)博士は日本学術振興会が運営する第30回国際生物学賞を2014(平成26)年に受賞するという快挙となりました.以下の研究室のサイトにその紹介があります.
http://paleogeo-ando.sci.ibaraki.ac.jp/index.php?id=159

いずれにしても,本論文は高橋先生の長年にわたる研究成果の賜物です.

 

発表論文
Takahashi, M., Herendeen, P. S., Herrera, F., Hirayama, R., Ando, H., Sasaki, K. and Crane, P. R., 2021, A new assemblage of plant mesofossils (late Coniacian – early Santonian; Upper Cretaceous) from the Tamagawa Formation, Kuji Group, in northeastern Japan. Paleontological Research, 25 (2), 120-126.

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