1.白亜紀中期における陸域湿潤化

白亜紀中期における陸域湿潤化:温室地球システム解明に向けたモンゴル白亜系調査

(キーワード:モンゴル,下部白亜系,湖成層,古環境,白亜紀中期,温室期,陸域湿潤化)

概要: モンゴルの下部白亜系の湖成層に注目し,これらが「海洋無酸素事変(OAE)1a時の海洋表層生物生産と有機炭素埋積率の増大を引き起こす,陸域湿潤化と化学風化度増大の直接証拠」との作業仮説の検証を行う.
  1. アプチアン階下部の陸成層(Shinekhudag層とKhukhteg層)を詳細に地質調査し,堆積相解析やシーケンス層序から堆積環境の変遷を明らかにする.
  2. 採取した連続柱状試料から,有機炭素の炭素同位体比(δ13Corg)変動曲線を求め,日本や欧州から報告されているOAE1a時の炭素同位体変動曲線と比較し層序対比を行う.
  3. 有機・無機化学分析により,化学風化度の変遷を詳細に復元する.
  4. 調査分析結果を総括し,OAE1a時の陸域環境変動の変遷が,海洋の有機炭素埋積にどのようにリンクしていたのかを復元する.
  • 基盤研究(B)海外学術調査 白亜紀中期における陸域湿潤化:温室地球システム解明に向けたモンゴル白亜系調査(代表者:平成21-23年度)
  • 研究(B)海外学術調査 モンゴル白亜系湖成層のコア掘削:数万年精度でのOAE期の陸-海環境リンケージ解明(代表者:平成25-27年度)
  • モンゴル科学アカデミー古生物研究センター(Dr. Niiden Ichinnorov)との国際共同研究

論文・報告: A39, 47, 56;B論文23

2009年調査の様子 2010年調査の様子
2011年調査の様子 2012年調査の様子
2013年調査の様子 2014年調査の様子

モンゴル白亜系調査隊メンバー

安藤 寿男 (代表者:隊長) 白亜系層序学,堆積地質学
長谷川 卓 (金沢大学 自然システム学系 教授) 白亜系層序学,同位体層位学
太田 亨 (早稲田大学 教育・総合科学学術院 講師) 堆積学,無機地球化学
長谷川 精 (名古屋大学博物館 特任助教) モンゴル白亜系層序学
山本 正伸 (北海道大学 地球環境科学研究院 准教授) 有機地球化学
長谷部徳子 (金沢大学 自然システム学系 准教授) 地球年代学
Gang Li (ガン・リー 中国科学院南京地質古生物研究所 准教授) 中生界層序学,カイエビ類古生物学
Niiden Ichinnorov (ニーデン・イチノロフ モンゴル科学アカデミー古生物研究センター研究員) 白亜系層序学,古花粉学
村田崇行(茨城大学 理工学研究科博士前期課程) カイエビ類化石の古生物学

2009年の調査

8月5日~24日(野外調査は8/11-19)

現地調査隊メンバー

現地調査隊メンバー
前列左から長谷川精,ツェレンバト,安藤,山本,長谷川卓,後列左からドルジスルン,ガントヤ,デルゲルツォクト博士,アラドナバザル,バトシャータル,太田

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調査地域

1)フレンドホ(Khuren Dukh)地域

フレンドホ(Khren Dukh)地域
フレンドホ(Khuren Dukh)地域での調査(2009年8月11日)

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2)シネフダグ(Shine Khudug)地域

シネフダグ(Shine Khudug)セクション全景.白亜紀前期(アプチアン期前後)のシネフダグ(Shine Khudug)層の湖成薄葉理頁岩が層厚250mにわたって露出する. シネフダグ(Shine Khudug)セクションでは地層の傾斜方向に5-10m間隔で薄葉理頁岩の60試料を採取(2009年8月13-16日)
試料採取作業 試料採取作業
シネフダグ(Shine Khudug)層の湖成薄葉理頁岩に見られる,数cm~10数cm単位の周期的なサイクルが認められる. シネフダグ(Shine Khudug)層の薄葉理頁岩にしばしば含まれるカイエビ(甲殻類の仲間)化石の密集層

シネフダグ層の上位のフフテグ(Khukhu Teeg)層の模式地.砂漠の向こう側がシネフダグセクション 調査終了して3台の四駆車で移動
試料採取作業 調査の様子

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3)エーデムト(Eedemt)地域

エーデムト(Eedemt)セクション全景.当初,下部白亜系とみなしていたが,調査によって中上部ジュラ系であることが判明し,フーティン・ホトゴル(Khootin Khotgor)層はハマルフーボー(Khamarkhoovor)層に比較される.(2009年8月16-19日) 試料採取作業
試料採取作業 ボーリングコア観察の様子

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2010年の調査

8月15日~30日(野外調査は8/18-27)

現地調査隊メンバー

2010年現地調査隊メンバー
前列左からトクシェ,バイラー,イチノロフ博士,安藤,太田,後列左からカナ,アラドナバザル,長谷川精,スフバーター,Gang Li博士

調査地域

1)エーデムト(Eedemt)地域
2年目の本年は,昨年の調査で中上部ジュラ系と判明した地層の全体の層序を把握するため,広域調査と精密層序確立および精密試料採取を組合せながら調査を行った.石炭層を含む砂岩泥岩互層をフーティン・ホトゴル(Khootin Khotgor)層,湖成薄葉理泥岩をエーデムト(Eedemt)層として識別した.

エーデムト(Eedemt)層の露頭全景.左側に緩く傾斜する. カイエビ類化石の集中採集.左は中国南京地質古生物研究所の李?(Li Gang)教授.暗灰色薄葉理頁岩から層準によって多量のカイエビ化石が含まれる.
フーティン・ホトゴル(Khootin Khotgor)層の石炭層. モンゴルの石炭企業による探鉱調査ボーリングコアの観察.
モンゴルの石炭企業による探鉱調査ボーリング. モンゴルの石炭企業による探鉱調査ボーリング.

ボーリングコア調査(イチノロフ氏,長谷川精). エーデムト地域北部の基盤の花崗岩地域の調査.手前の赤茶色の地域が花崗岩で,上部の黒い丘陵地帯はジュラ系

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2)シネフダグ(Shine Khudug)地域

下部白亜系湖成層のシネフダグ層の岩相.写真の上方向こう側に緩く傾斜.手前から灰色石灰質葉理頁岩,暗灰色頁岩,オレンジ色石灰質泥岩,灰色頁岩が繰り返している. 川沿いの石灰質泥岩からなるシネフダグ層下部の調査.上側にキャンプ地が見える.
北方4kmから望むシネフダグ丘陵.遠方の木が生えている一帯の中央部にキャンプ地がある. 夕焼けのシネフダグ丘陵.シネフダグ層は左側に緩く傾斜.自分の影が長く露頭に伸びる.
シネフダグ丘陵のシネフダグ層の露出状況.地層は左上位で左側に緩く(約15度)傾斜している.暗灰色,黄色,オレンジ色,灰色の岩相が互層している様子が,湖成環境の変動を表すものとして,その成因に研究の焦点を当てている.

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3)ハラフヅル(Khara Khutul)地域

中部ジュラ系のハマルフーボー(Khamarkhoovor)層の全景.地層は東西性(右左)走向で北(手前)側に急傾斜する.エーデムト地域のフーティン・ホトゴル層およびエーデムト層に対比される.丘陵中腹にある峰状に突出する地層は,上位に不整合で重なる上部ジュラ系シャリリン層の礫岩. ハマルフーボー(Khamarkhoovor)層の泥岩.
上部ジュラ系シャリリン層基底の礫岩層. 上部ジュラ系シャリリン層基底の礫岩層.手前の直立に近い急傾斜面は,下位のハマルフーボー(Khamarkhoovor)層との不整合面.
上部ジュラ系シャリリン層中部の赤褐色の陸成斜交層理礫岩. シャリリン層に重なる下部白亜系ツァガンツァフ層下部の玄武岩が作る峰状地形.
ツァガンツァフ丘陵から南方を望む.手前の涸れ川から平原に地形が変わる.砂漠に轍(わだち)が沢山刻まれている.平原中央に見える建物群はズンバヤン油田の施設と思われる. レンタカーの三菱デリカワゴンが砂地でスタック.採集岩石試料やキャンプ用品が満載のため,立ち往生.スコップで砂を取り払い,皆で押して何とか脱出.

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2011年の調査

8月3日~14日

現地調査隊メンバー

2011年現地調査隊メンバー

前列左からナラ,村田,安藤,イチノロフ博士,オトゴ,長谷川精,後列左からボロー,ツァゴ,アルタナ,トクシェ(撮影:トゥンボ)

調査地域

1)シネフダグ(Shine Khudug)地域
3回目の調査となる今回は,シネフダグ(Shine Khudug)地域において,白亜紀前期(アプチアン期:約1億2000万年前前後)のシネフダグ層のトレンチ掘削調査を中心に,精密な堆積相層序の確立を目指した.

シネフダグ層主要部のトレンチ掘削.モンゴル人3人のタフな作業員が猛暑の中1週間毎日懸命に掘ってくれた. 幅25cm間隔での堆積物試料精密採集,およびカイエビ類,貝形虫,植物化石の採集.
トレンチ断面の岩相精密記載.右端はキャンプ地. シネフダグ層のトレンチ掘削全景.地層は10-15度北側へ緩く傾斜する暗灰色薄葉理泥岩と挟在する石灰質泥岩(ドロマイト)葉理からなる.
トレンチ掘削後の一息(長谷川精). トレンチ掘削後の打ち合わせ(長谷川精,村田崇行).
シネフダグ地域北部にある,シネフダグ層最上部と上位のフフテグ層(丘陵最上部の砂岩層).40度を超える暑さの中の調査. シネフダグ層の下位のツァガンツァフ層の河川成斜交層理砂岩・礫岩層.

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2012年の調査

9月18日~27日

現地調査隊メンバー

2012年現地調査隊メンバー

前列左からサイハナ(助手),安藤,アルタナ(運転手),イチノロフ博士,長谷川精

調査地域

1)シネフダグ(Shine Khudug)地域
4回目の調査となる今回は,シネフダグ(Shine Khudug)地域において,白亜紀前期(アプチアン期:約1億2000万年前前後)のシネフダグ層のトレンチ掘削調査を中心に,精密な堆積相層序の確立を目指した.特に2011年に掘削トレンチの補足調査と,欠如層準の新規掘削調査を行った.また,シネフダグ層の下位のツァガンツァフ層の河川相について涸れ川沿いの露頭調査から堆積相層序を組み立てた.

2011年のトレンチ調査で地質柱状がつながっていなかった層準を新たにトレンチ掘削し,完全な層序を確立した. 2011年の調査でできなかった,精密試料採取を実施.
キャンプから上流の涸れ川沿いで,シネフダグ層の下位のツァガンツァフ層の河川相の層序と層相を調査.

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2)フフテグ(Khuhu Teg)地域
シネフダグ丘陵の北西側3kmにあるフフテグ丘陵で,シネフダグ層の上位であるフフテグ層の層相を観察し堆積環境を調べた.シネフダグ層の均一な湖成頁岩相とは異なり,塊状石灰質砂質泥岩や泥質砂岩からなり,一部に淡水性の二枚貝や巻貝が密集する層準が確認できた.

シネフダグ丘陵の北側にあるフフテグ丘陵でフフテ
グ層を調査.正面遠くに見える左側の木立がキャン
プ地で,その左にシネフダグ丘陵がある.

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2013年の調査

8月17日~30日(野外調査は8/20-27)

現地調査隊メンバー

現地調査隊メンバー
前列左から新谷,安藤,イチノロフ博士,ハタナー,村田,後列左から,スフバートル,ナラ,長谷川精,太田,オトゴ,

 

調査地域

1)シネフダグ(Shine Khudug)地域
5回目の調査となる今回は,シネフダグ(Shine Khudug)地域において,白亜紀前期(アプチアン期:約1億2000万年前前後)のシネフダグ層のトレンチ掘削調査を中心に,精密な堆積相層序の確立を目指した.


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2014年の調査

8月19日~23日(コア掘削:)

現地調査隊メンバー

2014年現地調査隊メンバー

 

調査地域

1)シネフダグ(Shine Khudug)地域
6回目の調査となる今回は,シネフダグ(Shine Khudug)地域において,白亜紀前期(アプチアン期:約1億2000万年前前後)のシネフダグ層のトレンチ掘削調査を中心に,精密な堆積相層序の確立を目指した.

CSH-00

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キャンプでの生活の様子

フレンドホ(Khuren Dukh)地域でのキャンプ.前期白亜紀被子植物調査隊(高橋正道:新潟大,山田弘:金沢大)との合同キャンプ シネフダグ(Shine Khudug)セクションでのキャンプの日没(2009年8月14日)
エーデムト(Eedemt)地域でのキャンプの早朝.前日の激しい雷雨がウソのよう(8月19日) エーデムト(Eedemt)地域でのキャンプ夜の会食.ホルホグパーティ(2009年8月16日)
モンゴル料理ホルホグ.羊肉の蒸し焼き.牛乳缶に肉,野菜,焼き石を入れて中と外から加熱 東ゴビプロジェクトのゲルキャンプ.日蒙共同石炭探査の現地キャンプ(2009年8月18日)
Shine Khudag地域でのキャンプの早朝(2010年8月24日)


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広大なゴビ砂漠

ゴビ砂漠南西部バヤンザグ.  Flaming Cliff(2008年8月)1920年代にアメリカの古生物学者アンドリュース(Roy Chapman Andrews)が最初にプロトケラトプスや恐竜の卵の巣を見つけた有名な場所.(2008年8月17日) 恐竜の卵殻化石.2個が縦に配列しているので,恐竜の巣の一部か?Flaming Cliff
放牧されたラクダの群れ フレンドホーシネフダグ間(2009年8月13日) エーデムト・セクションのキャンプ横に散乱するのラクダ死骸の骨格(2009年8月15日)
チョイル-サインシャンド間の国道(未舗装).360°の地平線が広がり,何一つ人工物が見えない.(2009年8月12日) ゴビ砂漠南部で遭遇した砂嵐.サインシャンド西部ドルノゴフマンダー(2009年8月13日)

エーデムト(Eedemt)地域でのキャンプ地を覆う雷雲.このあと2時間にかけて激しい雷鳴,雷光,強雨が通過した.(2009年8月18日) 雷雨の翌日は道路が沼になり,通行は細心の注意と運転テクニックが必要.モンゴル人ドライバーは手慣れたもの(2009年8月19日)
Khara Khudul地域のキャンプ地における夕暮れの遠望(2010年8月24日)
Shine Khudag地域の涸れ川での夕暮れ.秋を訪れを示す絹雲(2012年9月24日)

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